
近年の地球環境問題に対する意識の高まりを受け、あらゆる産業で持続可能性を重視した取り組みが求められるようになりました。物流業界もその例外ではありません。特に貸し倉庫などの物流施設の業界では、従来の効率重視の運用に加えて、環境への配慮や社会的責任が求められつつあります。その中で、建築物の環境性能を評価する「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」の導入が注目されています。貸し倉庫の環境性能を向上させることで、持続可能な物流の未来へ繋がることが期待されているためです。
今回はこの「CASBEE」に焦点をあて、貸し倉庫などの物流施設との関係性に触れていきます回、地震が頻発する昨今、日本ではさまざまな地震対策が講じられています。防災訓練の実施や防災用品の奨励といった教育的な取り組みもあれば、警報システムや倒壊リスクの低い建物の建築といった技術的な取り組みもあります。技術の発展とともに地震対策は日々進化し続けており、国や自治体だけでなく、多くの企業なども地震に対する備えを強化し、被害を最小限に抑える努力を続けています。では、倉庫や物流センターといった施設ではどういった取り組みがされているのでしょうか。
目次
CASBEEの概要と意義
CASBEEとは、建築環境総合性能評価システムのことで、日本発の評価システムでもあります。2001年に国土交通省が主導して考案された、建物の設計、建築、運用における環境性能を多角的に評価するものです。
新築や改修する建築物を対象とする「CASBEE建築評価」、既存建築物を対象とする「CASBEE不動産評価」、オフィスビルを対象とする「CASBEEウェルネスオフィス評価」など、その種類は多岐に渡って分類されており、エネルギー消費の削減、快適な室内環境の提供、資源の有効活用といった目標を掲げ、建築物の持続可能性を総合的に判断しています。
評価結果は、建物の価値を高めるだけでなく、社会における環境意識の向上にも寄与します。
CASBEEの評価基準
CASBEEでは、建築物の環境性能を以下のような基準で評価しています。
①環境品質(Q)
建築物が提供する快適性や利便性を評価します。具体的には、自然光の活用、室内空気質、緑化などが含まれます。
②環境負荷(L)
建築物が自然環境に与える影響を評価します。エネルギー消費量やCO2排出量などが対象です。
③建築環境効率(BEE)
環境品質(Q)を環境負荷(L)で割った値で、建築物の総合的な環境性能を示します。この値に基づき、以下の5段階でランク付けされています。
・Sランク(素晴らしい):BEEが3.0以上
・Aランク(大変よい):BEEが1.5以上3.0未満
・B+ランク(良い):BEEが1.0以上1.5未満
・B-ランク(やや劣る):BEEが0.5以上1.0未満
・Cランク(劣る):BEEが0.5未満
貸し倉庫とCASBEEについて
貸し倉庫において、CASBEEを適用する利点は多岐にわたります。倉庫は一般的に、大量の物資を効率的に保管するために設計されていますが、エネルギー消費が高く、環境負荷が大きい施設でもあります。そのため、以下のような視点からCASBEEの素養を取り入れた環境性能の活用が求められています。
エネルギー効率化
高性能断熱材や自然換気の導入、太陽光発電システムの設置などによって、貸し倉庫のエネルギー消費を大幅に削減できます。これにより運用コストも削減でき、テナント企業にとっても魅力的な選択肢となります。
環境負荷の軽減
環境負荷を最小限に抑えるためには、リサイクル素材を用いた建築や雨水利用システムの導入などの取り組みが考えられます。これにより、地域社会や環境への配慮を示すことができます。
快適な労働環境の提供
倉庫内の温度や湿度の適切な管理、明るい照明や清潔な空間の確保は、従業員の作業効率を向上させるだけでなく、テナント企業の満足度を高める要素にもなります。
市場価値の向上と企業イメージへの影響
CASBEE認定を取得した貸し倉庫は、その高い環境性能と快適な労働環境によって市場価値が向上します。また、環境配慮型の企業としての姿勢を示すことで、社会的信用を得ることができます。これにより、新規テナント獲得や長期的なビジネス関係の構築が容易になります。
課題と今後
環境への配慮だけでなく、企業のイメージなどにもプラスの効果をもたらす一方、CASBEE基準を満たすための初期投資や技術的課題も存在します。これらの課題を克服するためには、国や地方自治体からの補助金や技術サポートの活用、また専門的な知識を持つコンサルタントとの連携が重要です。
これにより、より多くの貸し倉庫がCASBEE基準を達成し、業界全体の発展に繋がっていくことが期待されます。
CASBEEを導入した貸し倉庫は、単なる物品保管のための建物ではなく、持続可能な物流システムの中核的な存在として機能します。エネルギー効率の向上や環境負荷の軽減を目指した倉庫運営は、地域社会や地球環境に対する責任を果たすだけでなく、ビジネスとしても長期的な利益をもたらします。
これからの貸し倉庫業界は、環境配慮と効率的運営を両立させた新たな価値創造の時代へと向かっていくと考えられます。

まとめ
以上、CASBEEについての概要や物流業界への影響などを簡単にまとめました。1900年代後半から地球温暖化や資源の枯渇といった地球規模の環境問題が注目されるようになり、さまざまな業界に影響をもたらすようになりました。倉庫を含め、建築分野についても同様で、環境負荷を評価する手法が求められるようになり、結果的にこうした環境性能評価の枠組みが拡大しました。物流施設は数・規模も幅広く、流通面はさることながら、その影響力は大きなものになります。持続可能な物流の未来を創るためにも、環境配慮型施設への意識の高まりが期待されます。
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