物流倉庫の移転を考えはじめた方向けに、賃貸倉庫(貸し倉庫)への移転計画を立てるための準備やポイントなど、4回ほどに分けてお伝えしております。今回は倉庫移転をスムーズに進めるために、現在借りている倉庫の退去手順や移転先と新たに結ぶ賃貸借契約の流れ、契約書のチェックポイントなどをご紹介いたします。
目次
倉庫の賃貸借契約の流れ
倉庫の賃貸借契約は、申込を行ってから契約締結までに1ヶ月程度かかります。
入居審査で問題がなく、希望賃貸条件などの交渉もない場合は、2週間ほどで契約締結となることもありますが、条件交渉や契約書の内容変更を行う場合は、貸主側の社内稟議や決裁、リーガルチェックなどに時間がかかることがございますので、1ヶ月はみておきましょう。
現在借りている倉庫の退去と原状回復
移転先の倉庫との契約前に、現在借りている倉庫の解約についての確認も重要となります。
解約を行う時は、貸主へ書面による通知が必要となりますので、解約予告期間について確認しましょう。一般的には、『1年から半年前までに』とされている契約が多いです。
また、契約期間中の中途解約を希望されている場合は、中途解約が可能か確認が必要となります。中途解約不可の場合、契約期間満了前に解約すると退去日から契約満了日までの残存期間の賃料を一括で支払うなどの違約金が発生いたします。
原状回復についても、工事の範囲や期間、期限や貸主の指定業者で工事を行うのか、契約書を事前に確認しておくことが重要です。
入居申込書の提出と審査
倉庫を借りるために、まず入居申込書の提出が必要となります。
入居申込書については、自社の企業情報(会社名、代表者名や資本金、決裁条件)と、希望賃貸条件を記載いたします。なお、入居申込書は倉庫を借りることを前提に、貸主に入居審査をお願いする書面となりますので、十分にご検討された上で申込されることをおすすめいたします。
申込書の提出後、貸主側で入居審査(信用調査)が行われます。だいたい1週間ほどで、審査結果がでてきます。審査基準については、物件によって変わってきますが、大型物流倉庫など賃料が月、数百万円以上の倉庫になると審査基準は厳しくなります。信用調査では問題なくとも、騒音・臭い・汚れる作業が伴う場合など荷物によって断られることもあり、有効な対策案の提出が必要となる場合があります。
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賃貸借契約書の確認ポイント
申込後、入居審査(信用調査)や賃貸条件の折り合いがつけば、契約書の内容のすり合わせに進みます。倉庫の賃貸借契約書で確認するべきポイントをご紹介します。
■運送業や倉庫業許可・登録のための、契約書のポイントは物流移転マニュアル④倉庫移転の倉庫移転後の各種許可・登録と届出をご参照ください。
契約形態(普通賃貸借または定期借家契約)
・普通賃貸借契約は、契約期間の定めがない契約となり解約予告を行わない限りは更新ができる。
・定期借家契約は、契約期間が明確に定められている更新のない賃貸借契約。(一般的には1年以上の長期契約、運送業の許可を取るためには、定期借家契約の場合は2年以上必要)
契約面積
・専有面積(使用面積)だけでなく、共用面積(共用部やEV、庇など)も契約面積に含むことがある。(詳しくは物流マニュアル②賃貸費用と倉庫選定ポイントを確認ください。)
・面積の単位について、平方メートル(m²)または、坪(日本独特の単位で、1坪は約3.3平方メートル)
■・測定方法について、壁芯面積(壁の中心線を基準に測定)と内法面積(壁の内側を基準に測定)があり、測定方法によって、同じ物件でも表示される面積が異なることがある。
敷金(保証金)
返還額や返還時期、敷金償却(敷引き)が定められているか確認。敷金(保証金)の目的は、賃料未払い、損害補償の保証や修繕費用の保証を目的としている。通常、契約終了時に修繕費用や補償費用などが、差し引かれて返金されるが、敷金償却(敷引き)が定められている場合は、償却された分は返金されない。
更新・解約について
普通賃貸借契約は更新ができるが、定期借家契約は、更新がないため、契約期間終了後の翌日を始期日とした新たな賃貸借契約(再契約)を行うことにより、引き続き使用することができる。どちらの契約形態であっても、中途解約不可となっている場合は、違約金を支払うことにより契約期間満了前の解約が可能となる。解約には、書面にて解約予告通知を提出することが必要となる。
原状回復について
倉庫の床や壁、天井の原状の認識、回復範囲、アンカー処理、倉庫床の塗装、空調機等の工事範囲や期間、期限や貸主の指定業者で工事を行うのか、契約書や修繕負担区分表を確認。経年劣化などの自然損耗について、どちらの費用負担となるのかも併せて確認。また、入居時の現状を写真で記録しておくことも重要となる。
設備と残置物について
空調機やクレーン、キュービクル等の、各設備の管理者、修理・交換費用負担や残置物の管理について確認。
・設備の場合は、貸主の所有物となるため、通常、経年劣化による故障などは、貸主の費用負担で修理・交換されることが多く、借主の過失により毀損した場合は、借主の費用負担となる。設備の修理交換の費用負担について範囲の確認が重要となる。
・残置物の場合は、前の借主が置いていった個人所有の物となるため、契約に含まれない。故障した場合の修理や交換については借主の費用負担となる。そのため、使用しない残置物がある場合は、入居前に撤去(処分)をお願いすることが重要となる。(断られる場合もあります)
重要事項説明
不動産会社が仲介している場合や管理として不動産会社が契約窓口などを請け負っている場合は、契約前に不動産会社によって重要事項説明書が作成され、内容の説明が行われます。
貸主(所有者)との直接契約の場合は、重要事項説明は定められておりませんので、重要事項説明は行われずに契約書や使用細則のみとなる場合が一般的です。
重要事項説明書には、これまで倉庫移転マニュアルでもお伝えしてきた重要な物件ポイントや契約内容について、不動産会社が調査し、借主に説明する書類となります。説明にかかる時間は物件によって異なりますが、最低でも40分から1時間となります。
契約締結後に、認識違いが発覚するとトラブルとなりますので、不安なことや気になることは、重要事項説明のとき(契約書への捺印前)に確認することが重要となります。
契約締結と倉庫引渡し
契約内容の確認や重要事項説明を受けた後、契約書へ捺印を行い、契約の締結を行います。契約締結の際に必要な書類として、会社の印鑑証明書、会社の登記簿謄本、保証人の住民票、印鑑証明書、決算書などが求められる場合もありますので、その際は事前に取得しておくことが必要となります。
契約締結後、保証金(敷金)、礼金や初月賃料などの支払いを行います。契約当日または契約始期日前に入金が必要となりますので、事前に入金の準備を行っておく必要があります。
契約始期日から倉庫を使用できるようになりますが、造作などで契約開始前に寸法など確認したい場合も多いかと思います。その場合は内見の承諾を得ることで契約開始前でも倉庫内を確認できます。
まとめ
今回、貸倉庫の賃貸契約で重要となるポイントについてご紹介しました。移転先との契約前に現在使用している倉庫の退去についての確認と調整も必要となってきます。移転先が見つかった後、使用中の倉庫と解約でトラブルになり、移転を取りやめることになった例などもあります。事前確認が重要となってきますので、お困りのことがございましたらお気軽にご相談ください。次回は移転手続きの際に必要な届出など、ご紹介いたします。